大人の趣味ピアノ、コンクール挑戦記①

80歳、はじめてのコンクールへ ― 本番まであと1ヶ月

「先生、今までピアノのレッスンを受けてきて、人生の記念として、コンクールに挑戦してみたいと思うのですが・・・・」
このようなご相談を受けたのは、今から2年ほど前のことです。
今年81歳になられるTさんからのお言葉でした。

Tさんは、子どもの頃から学生時代までピアノを学ばれておられたそうですが、ご結婚を機に楽器から離れられました。その後は子育てに励まれ、さらに病に倒れたご主人の介護、ご主人に代わってお仕事もなさるなど、ご家族を支える日々を送ってこられました。
ピアノに触れる時間のないまま歳月が流れ、その間、子供さん達が独立され、ご自身のお仕事も定年を迎えられて60歳半ば、「もう一度、大好きなピアノと向き合いたい」と、再び鍵盤の前に座られました。

当教室との出会いは、Tさんが所属する音楽グループで弦楽器を演奏されていたご友人Sさんからのご紹介でした。当時Sさんは当教室でチェンバロを学んでおられ、

「バッハを演奏するなら、バロック音楽について、基礎からしっかり学んでみませんか?」

とのSさんのお言葉がきっかけだったそうです。

それから10年以上。
Tさんはバロック音楽にとどまらず、今ではベートーヴェンやショパン、ブラームスやドビュッシーと、クラシック様式の異なるピアノ作品へ、ご自身の世界を広げてこられました。

そして今回のコンクール挑戦。

数あるピアノコンクールの中から、

・開催時期
・会場
・課題曲か自由曲か
・演奏時間
・暗譜の有無
・予選の有無
・参加資格 など

一つひとつの条件を確認しながら、Tさんとご相談を重ね、最初の一歩にふさわしい舞台を選びました。

この時に、一番大切にしたのは、結果ではなく、Tさんの「挑戦してみたい!」というお気持ちです。

本番まで、ちょうどあと1ヶ月。
年齢を重ねたからこそ生まれる音の深み、人生の歩みがにじむ表現。
講師として指導する立場ではありながら、今回のTさんの挑戦は、私自身も学ばせていただく時間でもあります。

本番までの道のりを、これから少しずつ記録に残していきたいと思います。